ハモリ講座
「連続講座第9回」実践的なアレンジ〜その3「島唄」を3人でハモる
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 この連載も残すところ2回となりました。皆さん、音楽理論も、ある程度仕組みが分かってくると、ただ楽譜を見ているよりもいろいろな発見って面白くなって来ませんか?今回は、「島唄」を3人でハモれるように、前回アレンジした二人版を少し変更して、ベースを加えました。どんなアレンジになっているのか、どんな方法でアレンジしたのか、ちょっと見てみましょう。
(1)アレンジの手順
 まず、大切なのは、曲全体の構造を考えることです。Aメロは何回出てくるのか、Bメロは何回出てくるのか、サビは何回出てくるのか、そして、全体として、音楽的に一番盛り上がるのはどの部分なのか、ということを前もって調べておくことが重要です。そして、1回目のAメロは、この伴奏型で、2回目は、こっちの伴奏型で、という風に決めちゃいます。
 もちろん、ここでの決定は仮のもので、最後に書き直したり書き加えたりしますが、予めこのようにある程度予定を立てちゃう事が大事なんです。
 これはアレンジじ限らず、曲を作る上でも、行き当たりばったりで、曲の最初から最後まで演奏順に曲を作っていくのではなく、最初に、いろいろな材料を揃えて下ごしらえをして、その後で、どんな風に味付けして、盛りつけるか、まるでお料理みたいですが、そんな方法で進めます。「島唄」の3人版を見てみると、「でいご〜のはながさき〜・・・」というメロディは、[A]、[B]、[E]と3回出てきますが、このアレンジでは、ベースとコーラスのパートが、[E]に向かって、だんだんに動きを持ち始めます(図1)。下の楽譜をクリックすると大きく鮮明になります。
 最初はロングトーンでハモっているんですが、[B]の5小節目でだんだん動き初めていますよね?
こんな風に、同じメロディが数回出てきた時に、全部同じコーラスでまとめちゃうと、全体としてコントラストが付きませんから、最初にある程度予定を立る(=材料を予め用意する)ことを心がけて下さい!(2)ベースを加えると.... ア.ベースによって和声感が付く
 まず、3人版アレンジですが、2人版アレンジとの大きな違いは、なんといってもベースを入れたことです。もちろん、3人ともリードボーカル的なパートを受け持つアレンジ法だってあるのですが、今回は、ベースを加えてみました。楽譜はこちら
 ベースが入ったことで、二人だけでハモるのよりも、ぐっと、「和声感」が出てきます。二人ハモリ版の「島唄では、二人のパートは、メロディ+コーラス、と、役割分担を明確にしませんでした。二人が、共に大事なメロディラインを歌う、そのお互いのメロディラインがちょっとずつ違うからハモル、というアレンジだったんです。
 今回のアレンジでは、ベースが入ったことで、伴奏側のパート(コーラスとベース)で、はっきりと「ばんそうするぞ」という動きを作ることが出来ました。[D]の所や(図2)[I]のところ(図3)です。ちょっと詳しく見てみると、ベースは、そこでのコードのルートで「和声感」を支えて、コーラスパートは、コードを構成している音を歌っているだけなんです。すごくシンプルですが、基本的な伴奏の作り方と言えます。
楽譜をクリックすると大きく鮮明になります。

イ.ベースラインの音選び>
 次に、ベースラインの作り方の基本についてです。アレンジするときに、ベースはただコードのルートをたどっているだけで良いのか、っていうと、そうではないんです。効果的に、コードの他の音や、8回目の所で書いた「非和声音」を加えて、下から「支えている」だけじゃない個性を発揮するように書くことも大切なんです。
[C]の1〜2小節目を見て下さい(図4C1〜2小節目のベースパート)。ここでは、ベースラインは、完全にコードのルートをとっています。

次に、[D]2〜3小節目を見て下さい。ここで、初めてルート以外の音がベースラインに出てきます。G#m7 の時の「D#」と、F#m7 の時の「C#」です。どんな音なのかというと、両方とも、それぞれのコードのルートから5度の音なんです。ベースラインでは、適度にルートから5度の音を混ぜていくと、ごく自然な感じでベースラインを動かしていけるんです。
この時に、G#m7 なのにベースが「D#」だから、コードは「G#m7/D#」にならないのか、と思うかもしれませんが、なりません。ベースラインを活き活きさせるための「装飾的」な音の動きなので、ここでの響きはあくまで「G#m7」の響きを壊すことはないんです。次に[J]を見てみましょう。ここではもっと効果的にルートから5度の音が出てきます(図5)。こんな風に、効果的にルートから5度の音を混ぜて、活き活きしたベースラインを作って見ましょう!
下の楽譜をクリックすると大きく鮮明になります。

ウ.ベースラインのリズム
 [J]の部分は、ベースラインを活き活きさせるために、もう一つ大事な方法を使っています。それは、休符を使うことです。休符っていうのは、ただの「お休み」だと思われがちなんですが、そうではありません。休符は、音符と同じように、時には、音符以上に大切なものなんです。今までのベースでは、コードが変わった時、常に拍の頭で音を変えていました。[J]1小節4拍目で、「B/D#」のところですが、ここでは、コードのルート(B)をベースラインの装飾につかって、肝心の「D#」を、4拍目の裏で打つようにしています。
このちょっとした工夫で、聴く人が、「普通、次はこの瞬間に音が鳴るだろうなあ」と期待するのを裏切っちゃうわけです。そうすると、「あれ?」と思う瞬間が何回も訪れて、結果的にその「あれ?」とか「おや?」っていうのが「活き活き」しているように聴こえてくるわけです。これは、ベースラインだけに言えることではありません。[A]の部分、ベースとコーラスが1拍遅れて出てきます(図6)。これだけの工夫で、このパートがぐっと活きて来ます。
下の楽譜をクリックすると大きく鮮明になります。

 なんで休符が音楽のラインを活き活きさせるかというと、音は、鳴り始める瞬間の前から始まっている、っていうことです。これは、歌うときにも忘れないで下さい!みんなで、「いっせ〜の〜せ」って始める時には、一番最後の「せ」で、息を吸いますよね?その息を「吸った瞬間」が、音楽の始まりで、「音が出た瞬間」が音楽の始まりではないんです。アレンジしながらパートに休符を適度に入れていくことは、あるパートのフレーズと、他のパートのフレーズの音楽的な始まりをずらす、っていうことでもあるんです。音楽がもう始まっているパートに対して、すこし待っちゃうパートが出てくる、こんな風にフレーズとフレーズがちょっと複雑に重なってくると、カッコ良いハモリが出来る、っていうことです!
 フレーズとフレーズが重なる、ということについて触れましたが、実は、フレーズとフレーズの始まりをずらす、という方法には、他の効果もあるんです。どんな効果でしょう?
(3)フレーズとフレーズを重ねる
 [A]の5小節目ところですが、コードにEpedalと書きました。これはメロディでどんな音が出てきても、ベースラインで「E」の音を持続させる、ということです。ここは原曲では三弦が演奏するメロディですが、そのままボーカルで歌うには音域が跳びすぎているので、原曲のイメージを残しつつ、歌いやすいように音型を変えました。図7が、その変更後の基本的なメロディです。[A]5小節目で、このメロディが、コーラスからリードに受け渡されます。

 このようなフレーズの受け渡しは、図8−aのようにするよりも、図8−bのように、前後の音も加えて、お互いが独立したフレーズを歌いながらも、原曲のフレーズが浮き上がってくる、という方法で書いた方が、音楽的になります。わかりやすいように、スラーを付けて、フレーズとフレーズの切れ目をハッキリさせてみました。こんな風に、あるフレーズの途中から他のフレーズが始まる、という風に重ねる方法は、音楽的な進行がすごくなめらかな感じになります。


 こんなことを参考にしながら、コードから伴奏を起こして、そこにメロディを加えると、多分、皆さんが思っているより簡単にアレンジが出来るんです。是非是非トライしてみて下さい!
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