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「連続講座第5回」〜ネコでもわかる音楽理論の基礎〜その2

 年が明けてしまいましたが、だんだんに、どうやったら実際にアレンジできるのか? というところに入っていきます。今までの理論を一通り復習してみて下さい。そして、 それをきちんと理解できれば、これからの内容についても、大丈夫です。

 今回は、和音の話が中心になります。

 1.和音の話
 2.基本のコードネーム
 3.和音の役割と連結
 4.音楽はカデンツの集合体

1.和音の話

 基本的な和音は、ドミソ、レファラ、というように、3度ずつ(音程の度数、憶えていますか?忘れた人は、前回の連載を精読して下さい!こちらから)音を重ねた状態をいいます。

 和音を学ぶためには、最初は、コードネームで憶えるよりも、その調の中での 和音の役割を理解する必要がありますので、以下のように、和音を憶えていきましょう。
図1-1
図1-1

 前回の、音階のところで、ドレミファソラシド、ではなく、I−II−III−IV−V−VI−VII という風に数字で憶えましたよね(図1ーI)。和音も同じです。
 Iの和音だったら、一つおきに、 I−III−V という和音になります。ハ長調だと、ドミソです。II の和音は 、II-IV-VI 、III の和音は、III-V-VII となります。(IV の和音は、IV-VI-VIII ではなく、VIII=I の音なので、IV-VI-I です。)(図1−II)
図1-1
図1-2

 次に、各和音に含まれる音が、それぞれどういう音程関係になっているのか、詳しく見てみましょう。
 ドレミファソラシドのように、長調の音階で考えてみます。分かりやすいように、ハ長調の階名も併記します。

I の和音(I-III-V)
(ドミソ)
I-III(ド-ミ)= 長3度
III-V(ミ-ソ)=短3度
I-V(ド-ソ)=完全5度
II の和音(II-IV-VI)
(レファラ)
II-IV(レ-ファ)=短3度
IV-VI(ファ-ラ)=長3度
II-VI(レ-ラ)=完全5度
IIIの和音(III-V-VII)
(ミソシ)
III-V(ミ-ソ)= 短3度
V-VII(ソ-シ)=長3度
III-VII(ミ-シ)=完全5度
IVの和音(IV-VI-I)
(ファラド)
IV-VI(ファ−ラ)= 長3度
VI-I(ラ−ド)=短3度
IV-I(ファード)=完全5度
Vの和音(V-VII-II)
(ソシレ)
V-VII(ソ−シ)= 長3度
VII-II(シ−レ)=短3度
V-II(ソ−レ)=完全5度
VIの和音(VI-I-III)
(ラドミ)
VI-I(ラード)= 短3度
I-III(ド−ミ)=長3度
VI-III(ラ−ミ)=完全5度
VIIの和音(VII-II-IV)
(シレファ)
VII-II(シーレ)= 短3度
II-IV(レ−ファ)=短3度
VII-IV(シ−ファ)=減5度

 それぞれの和音の最初の音(Iの和音だったら、Iの音、ドミソの和音のドの音です) を根音(英語だとルート)と言います。それぞれの和音で、根音が一番下に来 ている和音を基本形と言います。

 ここで、長調の各和音を見てみると、いくつかのパターンに分けられます。
 一つ目のグループ・・・Iの和音、IVの和音、Vの和音
 二つ目のグループ・・・IIの和音、IIIの和音、VIの和音
 ちょっと番外・・・・・VIIの和音
 なんでこの3つのパターンに分けられるかは気づきましたか?

 一つ目のグループをピアノで弾いてみると、明るい印象で響きます。これを、長3和音(メジャー・トライアド)と言います。反対に、二つ目のグループは、暗い感じがする和音ですよね、これを短3和音(マイナー・トライアド)と言います。

 この二つのグループは、両端の音同士は、どちらも完全5度なのですが、真ん中の音の高さが、半音違っています。長3和音は、根音と真ん中の音が長3度、短3和音は、短3度なのです。(図2ーI)
図2-1
図2-1

 番外のVIIの和音ですが、根音から真ん中の音、真ん中の音から上の音までが、どちらも短3度で、両端の音同士は、減5度になります。こういう和音を減3和音(ディミニシュ・トライアド)と言います。

2.コードネームの基礎

 ここで、コードネームの基礎について触れておきます。コードネームというのは、 楽譜の上にアルファベットで記してある記号です。これを見れば、その時に鳴らす和音が一発で分かる仕組みになっています。まず、大文字のアルファベット、
 C、D、E、F、G、A、B
等ですが、これは、和音の根音(=ルート)を示します。さらに、大文字の後に何もない場合、長3和音であることを示します。たとえば、
だったら、ドミソの和音、
Fだったら、ファラドの和音です。

 もう一度言いますが、根音と真ん中の音までが長3度、真ん中と上の音までが短3度 、両端が完全5度です。
 それじゃあ短3和音はどのように記すのかですが、大文字の後ろに、小文字の「m」 を書きます。
 Cm、Dm、Em、Fm、Gm、Am、Bm、という風です。
 ここで、ハ長調の和音を、コードネームで書いてみましょう。(図1−II参照)

I II III IV V VI VII
C Dm Em F G Am Bdim

となります。VIIの和音だけが、減3和音ですから、唯一他とは違った文字がついてい ます。dim は、ディミニッシュと言います(図2参照)。
 コードネームは、コードネームを見ながらギターやピアノで和音を弾いたりするのに とても便利です。

 でも、理論の世界では、コードネームではなく、「1.和音の話」で書いたように調の中での何番目の和音か、という数字で勉強していきます。
 なぜかというと、それぞれの和音は、ある調の中で何番目に出てくる和音なるのかで、それぞれの役割があって、たとえば、同じドミソの和音でも、ハ長調に出てくるドミソ(最初に出てくる和音です)と、ト長調で出てくるドミソの和音(4番目に出てくる和音です)では、役割が全然違うのです。それは、その調の曲の中で、他の和音がどう鳴るかで、相対的にドミソの和音のカラーが違っ て聴こえるということなのです。

 では、和音の役割と連結について、話を進めましょう。

3.和音の役割と連結

 「1.和音の話」で、和音を音程の関係関係によって性格分けしました。こんどは、和音をつなげて行くにあたっての、取り決めについて書きたいと思います。
 中学の英語の授業で、主語−述語−目的語、とか、主語−述語−目的語−補語とか って勉強しませんでしたか?和音の連結にも、そういう取り決めがあります。文章みたいに、一つの調の中での役割が決まっているんですね。その役割(英語でいうと、主語、目的語、とかです)をまず覚えて下さい。

ア.和音の役割
 和音の理論では、それらの役割をトニック、ドミナント、サブドミナントと性格付けしています。
 カッコで囲まれたアルファベットは、 ハ長調(CMajor)でのコードネームです。

トニック トニックくん I VI(Am)
サブドミナント サブドミナントくん IV(F) II(Dm)
ドミナント ドミナントくん V(G)

 あれ? と思う人もいると思います。取りあえず今は、和声学の基礎段階ですから、この和音で話を進めます。IIIの和音とVIIの和音は、伝統的な和声学では、ほとんど使用しません。基本的な和声の構造を理解した後で、IIIとVIIの和音についても学びましょう。

(1)『トニック』
トニックくん  『トニック』はその調の主和音です。主和音というのはIの和音、 ハ長調でいうとドミソの和音のことです。この和音は調の中で最も安定した音なので、オーソドックスな曲であれば主和音から始まって主和音で終わるのが普通です。 そして、トニックには、主和音であるIの和音の他に、VIの和音(ハ長調のラドミ)も含まれます。これは、どういうことかと言うと、 IとVIの和音は、その調の主和音の「表と裏」の関係と考えて下さい。
 人間、誰でも、明るい部分と暗い部分を持っていますよね、良く、陰陽なんて言ったりしますが、全ての調に、平行調という陰陽の ペアーを持っています。陽がハ長調だったら、陰はイ短調です。
 つまりは、表も裏も同じ人間であるように、同じトニックだと考えることができるのです。

 ハ長調のIの和音(ドミソ)は、平行調であるイ短調のVIの和音(ラドミ) と、ドとミの音を共有していますよね。なので、音楽が進んできて、そろそろ安定したいな、と言うときに、表で安定するか、裏で安定するか、という違いだけなのです。もちろん、表で安定するのが一番ホッとしますが。

(2)『サブドミナント』
サブドミナントくん  『サブドミナント』は、トニックと性格が似ています。トニックとドミナントの 間を取り持ったり、トニック同士をつないだりするときに、より、響きを豊にして 音楽に幅を持たせる役割を持っています。

 サブドミナントの和音は、IV、ハ長調で言うとファラドです。ハ長調の下属音を 根音として持っている和音ですので、「下属和音」と言います。トニックと同様に、サブドミナントにも表と裏があります。IVの和音を表だとすると、その平行調にあたる3度下の和音、IIが裏になります。なので、サブドミナントは、IVとIIの和音ということになります。

(3)『ドミナント』
ドミナントくん  ドミナントは、その調の中で一番不安定な和音です。ハ長調ではソシレですが、ソシレの真ん中の音が、導音になっています(図3)(講座の1回目参照)。
図3
図3

 導音は、その調の主音にどうしても移動したくなってしまう音です。なので、ドミナントの和音 が響くと、自然にトニックに解決したくなってしまうのです。ドミナントの根音は、 Vの音、ハ長調でいうとソの音で、これは、「属音」と言いますから、Vの和音の ことを「属和音」と言います。

 ドミナントというのは、英語のdominate(=支配する)という言葉から来ています。実際に、調の一番安定している和音はトニックなのですが、その調を支配している 和音が、一番不安定な和音だ、というのは面白いですよね。思わずトニックに進むことを期待させるような響きが、その調を支配しているんだ、というネーミング と言えるでしょう。
 もちろん、ドミナントにも、裏と表の和音があります。でも、ドミナントの裏の和音については、後ほど触れます。ちょっと、他の和音とは事情が違って少し込み入っているのです。

イ.終止型(=カデンツorケーデンス)
 トニック、サブドミナント、ドミナントのそれぞれの役の登場には、英語の文法で、主語、述語の登場する順序が決められているように、決められた順序(コード進行と言います)があります。コード進行には、それぞれたくさんのパターンがありますが、その基本的な形を終止型と言います。原則的には全ての和音の進行は、安定している音から始まり、不安定な音を経て、また安定した音に「終止」する、というふうになっています。イタリア語でカデンツ、英語でケーデンスと言います。

 終止型は、
 T−D−T  T−S−T  T−S−D−T  (T=トニック・D=ドミナント・S=サブドミナント)
 という3つのパターンです。ハッキリ言って、このパターンの組み合わせでバランスを整えていけば、曲がつくれるし、全ての曲は、このパターンの連結に従っていると言っても過言ではないです。

 よく、子供の発表会とか、小・中学校の音楽の授業の最初と最後に、ピアノの和音に従ってお辞儀しますよね、和音を書くと「I−V−I」という和音なんですが(図4)、これは、上の、「T−D−T」の連結です。結婚式で歌ったりする賛美歌の最後に、「アーメン」って歌いますが、和音は、「I−IV−I」で、「T−S−T」です。(図5)
図4
図4

図5
図5

 具体的に和音をあてはめると、
T−D−Tなら、I−V−I(VI)
T−S−Tなら、I−IV−I
T−S−D−Tなら、I−IV(II)−V−I(VI)
(図6)になります。(基礎で学ぶ和声学理論では、II−I、IV−VIの進行は除外しておきます。)
図6
図6

4.音楽はカデンツの集合体

 ここで、キラキラ星を例としてあげて、終止形がどのように当てはまっているのか見てみましょう。(図6)。このように、曲の中で、和音の連結が、理論的に収まっていると、すごく自然に聞こえることが理解できましたか?

 では、さっそく、キラキラ星の曲に和音を当てはめて、基本的なアカペラコーラスを作ってみます。まず、基本的な、ソプラノ、アルト、テノール、バス、という形式で、和音は、すべて根音をベースにします。そしてなにより、皆さんがここまで読んだ範囲で和音をつけたいと思います。
 まず、基本的な、ソプラノ、アルト、テノール、バス、という形式で、 和音は、すべて根音をベースにします(図7)。
図7
図7

 このまま歌えば、きちんとしたアカペラコーラスとして十分綺麗に響きます。ただし、まだ、この和音は本当に基本中の基本です。 お料理で言えば、材料を並べたというところです。
 次回からは、さらにもう一歩進んでみたいと思います。

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(人より“うまい”アカペラを目指す実践法)

編著者: 柴山拓郎

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著者プロフィール

柴山拓郎 柴山 拓郎(作曲)
 1971年東京生まれ。ポピュラー音楽からテクノロジー音楽まで 幅広いジャンルの音楽を越境する現代音楽作曲家。2000年から『@ELISE』にてJ-POPのピアノ編曲なども数多くこなし、同ページではハモリ講座を執筆、アカペラのアレンジ法に関する音楽理論をわかりやすく解説する。

 97年東京音楽大学大学院修士課程修了。作曲を西村朗、池辺晋一郎、湯浅譲二、遠藤雅夫の各氏に師事。93年第62回日本音楽コンクールに、94年秋吉台国際作曲賞にそれぞれ入選。また、秋吉台作曲セミナーで、C・チェルノウィン、G・シュテープラー、K・シムの各氏に作曲を師事する。96年より 、作曲家団体「深新会」に所属し定期的に新作を発表。98年には、古楽器奏者と作曲家から成るグループ「アルコバレーノ」の結成に参加、以降毎年古楽器奏者と共に演奏会を企画、古楽器のための作品を作曲する。また、同年より、日本を代表する打楽器アンサンブル、パーカッショングループ72のメンバーとして、作編曲や 楽曲解説の執筆の他、J.ケージ、E.ヴァレーズ等の演奏にも携わる。2000年、オルガンのための「Monologue」が、松居直美氏によりオランダ各地で演奏された他、同年秋には、アムステルダム旧教会にて同氏によりCD収録された。邦楽器への取り組みも多く、二十絃箏のための「monody(1999)」をはじめとし、これまでに日本音楽集団、松村エリナ氏、真鍋尚之氏等からの委嘱を受ける。

 2001年5月にリリースされたトランペット奏者 曽我部清典氏のアルバム「トキノコダマ」に独自の視点で編曲したビートルズの「with a little help from my friend」が収録されている他、ピアニスト門光子氏のCD「風の記憶」に、「哀歌(monody)」が、武満徹、藤枝守、三木稔、西村朗、吉松隆ら日本を代表する作曲家の作品と共に収録されている。2002年春 M-A Recordingからリリース、同年レコード芸術準特選版に選定された。同氏の次作アルバム「東方逍遙」では、アジアのポピュラーソングを透明感のあるサウンドで編曲する他、新作が収録され、2003年レコード芸術準推薦版に選定された。

 美術や空間におけるサウンドデザインの活動も活発に行い、2005年 NPO法人 芸術資源開発機構とのコラボレーションで、埼玉県立近代美術館のためのサウンドインスタレーションをコンピュータプログラミングにより制作する。美術作家井上尚子氏とのコラボレーションは10年に及び、ICC、スパイラル、Bankart等における同氏作品への音響デザインを多数提供する。2006年からは同氏とのユニット「Air Plug」として活動を改めて開始し、福島現代美術ビエンナーレに作品を出展。

 2002年から東京電機大学 理工学部 情報システムデザイン学系アミューズメントデザインコース助手として「作曲・音楽文化研究室」を主宰。電子音響音楽等テクノロジーが関わった新しい音楽の表現研究や制作指導を、技術指導にとどまることなく「テクノロジー・アート・情報・社会」等の多眼的視点から捉えた授業やゼミを展開、後進の指導にあたっている。

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