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「連続講座第6回」〜ネコでもわかる音楽理論の基礎〜その3

 今回は、理論の残りの部分、

1.短調の和音
2.短調の音階(確認)
3.調の関係についての確認
4.7thの和音(四和音)
5.和音の転回とオン・コード その1
6.和音の転回とオン・コード その2
〜キラキラ星を発展させましょう〜
について触れます。

 次回からは、いよいよ実際に曲を選んで編曲の作業を公開する形で進めます。
 今回までが準備ということになります。

1.短調の和音

 長調の I から VII の和音について触れましたので、今回は、短調の和音について学びましょう。
 短調も長調と同じように音階の上に音を積み重ねて和音を作ります(図1)
図1
図1

 短調の和音も、トニック、ドミナント、サブドミナントの和音の度数は長調と同じです。短調でもトニックはつねに I と VI 、ドミナントは V、サブドミナントは II と IV です。
 ここで注意して欲いのですが、通常、音階の7番目の音は「導音」と言って、主音の半音下の音になる決まりになっています。そして、その「導音」は、ドミナントの和音の真ん中の音が役割を担います。図2を 見て下さい。

図2- I
イ短調の I - V - I (Am - E - Am)のカデンツ

図2ーI

図2 - II
イ短調の I - V - I (Am - Em - Am)のカデンツ

図2ーI

 図2- I は、真ん中のソの音に#がついています。本来は、ソの音は♯も♭もつかない無印の状態がイ短調の「固有音」ですが、そこでの和音がドミナントの機能を持つときに、ソの音にシャープを付けて、導音にします。ちょっとわかりにくいな、と思われた方は一回目をごらんください。
 そこでは(シ〜ドという風に)半音あがることで落ち着くと説明していますよね。つまり、ソ〜ラではでは導音(リーディングトーン)らしくならないので、わざわざシャープをつけて、半音にすることで終止感をつけているってわけなのです。
 図2- II のサウンドは、ドミナントに導音を含まない和音にしていますので、和声的なカデンツではなく、「モーダルな」カデンツになっていると言えます。
 モーダルっていうのは1回目の連載で触れたと思うのですが、昔の、和声学が成立する以前の音階のシステムの事です。
 ここでちょっと例を挙げて、短調のドミナントの扱いで、「和声学的な」響きと「モーダルな」響きを確認したいと思います。図3は、皆さんも良くご存じのグリーンスリーブスです。

図3- I
図3- I

ド−レミ−ファミ レ−シソ−ラシ ド−ララ−ソ#ラ シ−ソ#ミ−
  Am G F E7

図3- II
図3- II

ド−レミ−ファ#ミ レ−シソ−ラシ ド−ララ−ソラ シ−ソミ−
  Am G F Em

 どちらも確かにグリーンスリーブスですが、元になっている音階の種類が違います。皆さん、この曲ではどちらも良く聴くメロディーだと思いませんか?
 もちろん、図3- I のようにドミナントの和音を設定している旋律の方が、今の私達にはなんとなく自然に聞こえるかもしれません。でも、昔ながらのヨーロッパの音階としては、図3- II のほうがより雰囲気が出ていると言えるでしょう。(ちなみにAドリアンというモードです)

2.短調の音階

 ここで、短調の音階について確認しておきたいと思います。2回目の連載で、
「自然短音階」
「和声的短音階」
「旋律的短音階」
ということについて書きました。その時点ではみなさんピンと来なかったのではないかと思います。もう一度それらの和音を添付します。(図4)
図4- I 自然短音階(ナチュラル・マイナー・スケール)
図4- I

 自然短音階は、短調の音階の固有音だけを使用します。当然、導音(リーディング ・トーン)もそのままです。
図4- II 和声的短音階(ハーモニック・マイナー・スケール)
図4- II

 和声的短音階は、ドミナントの和音を想定して、導音だけが♯によって半音高くなっています。
図4- III 旋律的短音階(メロディック・マイナー・スケール)
図4- III

 和声的短音階を、ピアノで弾いてみると、ラシドレミファソ#ラの、ファとソ#の間の音程間隔がちょっと変わった広さを持ってしまいます。これは、増2度という音程なのですが、 増音程というのは西洋では昔から好まれてこなかった音階です。
 アラブの音楽には増音程を多用した旋律が多く、そのあたりの昔ながらの衝突も原因の一つだと思いますが(蛇使いが吹いているような音でキリスト様にお祈りってできないでしょうからね)増音程でメロディが進行するのは、一種のタブーだったのです。
 そこで、どうしたかというと、ラシドレミファ#ソ#ラ と、ファにもシャープを付けて上行してラソファミレドシラと、自然短音階で下降してくる音階を考案したの です。ファとソに♯が付いているだけで、ぐっと、その音階は、最後のラの音に「向かっているゾ」という気分にさせますよね。

3.調の関係についての確認

 調の関係についての確認をします。長調で、全ての調号(楽譜の左に記される♯と か♭の数です)に従って、12の全ての調について学びましたね?短調は、それらの長調の全て短3度下の音から始まる音階です。
 その同じ調号を共有している長調と短調を「平行調」と 言います。
 平行調=同じ調号を持つ短調と長調
 そして、短3度下の音階から始まっているということは、図5のように、共有している和音、例えばハ長調のレファラの和音は、ハ長調ではIIの和音だけれども、イ短調ではIV の和音になる、というような構図も頭の中に明確に描けるようにしておく必要があります。
図5
図5

 ここで皆さんにちょっと難しいお願いなのですが、、たとえば、へ長調(Fメジャー)のVI の和音は?って聞かれたら、即座にレファラ(Dm)、と言えるようにして欲しいのです。いきなりの暗記はむつかしいので、自分で表をつくってみると次第に覚えられます。
 アレンジをするときに、元曲のメロディラインを見て、楽器の音域や歌う人の声域に合わせて、調を換える必要が出てきます。そういうときにも、常に、元の調と、換えた調での和音の役割を理解しておく事はとても大切な事なのです。
 例えば、今の例でいうと、ハ長調では高いから五度下げへ長調にする。そうするとVIの和音ラドミ(Am)はレファラ(Dm)になるというわけです。

4.7thの和音(4和音)

 ここで、7th(セブンス)の和音を学びましょう。今までは、ドミソ、という3和音(3つの音で出来る和音ですね。英語ではトライアドといいます)を学びましたが 、4和音は、上にもう一つ重ねます。ドミソシです。(図6)
図6ハ長調の音階上の4和音とコードネーム
図6ハ長調の音階上の4和音とコードネーム

 ここはちょっと難しくなります。今までの3和音の部分は前回の連載の通りですが、 和音のルートから7th までの距離が、短7度の和音と、長7度の和音で区別しています。
 よく見ると、C と F の和音が、CM7 、FM7 と、大文字の「M」が記されています。これは、「メジャーセブン(=長7度)」と言い、それぞれの和音のルートから7thの音までが長7度の和音を意味します。
 反対に、Dm7、Em7、は、「7」という文字しか記されていません。これは「マイナーセブンス(=短7度)」と言います。それぞれの和音のルートから7thの音までが短7度である和音で、しか も3和音の部分が短3和音である事を意味しています。
 Bm7-5 というのはますます特殊な音に見えますよね、これは、実は、V の和音の9thの、しかもルートを省略した音、と見なされます。ちょっとこについては混乱してしまうといけないので、ここでは省略します。
 G7だけがちょっと意味が異なってきますし、最も重要です。
 長3和音の上に、短7度のセブンスが重なるのはこの和音だけです。V の和音はドミナントの和音なのですが、Vにセブンスが加わって、本来のドミナントの和音の意味を成すと言えます。
 図7を見て下さい。V7の和音に含まれる導音は半音上の主音に向かって進み、セブンスであるファの音は、半音下のミに降りるというのが一番自然な音の流れです。このように、基本的にV7が鳴ると、水が高いところから低いところに流れるように、I の音に進みたい、という聴覚的な希望を持つようになります。
 ハ長調の主和音はドミソですが、ドミソの和音は、たとえば、単体で鳴ったときにト 長調のIV の和音のにも聞こえてしまいます。ドミソの和音一つだけでは、「調」を決められないのです。ところが、ソシレファの音が鳴った瞬間、その音は、単独でも「ハ長調のドミナント」という決定的な存在になるのです。だから「ドミナント(=支配)」なんです。
図7 V7→ I の和声進行
図7

5.和音の転回とオン・コード その1

 次は、和音の転回についてです。「展開」ではなくて、「転回」です。
 ちょっと3和音に戻して話をしますが、ドミソの和音とミソドの和音、ソドミの和音は、どれも「C」、ハ長調の I の和音です。ドミソの和音をミソドに「転回する」、と言います。そして、コードネームで 書く時には、それぞれ、C、C/EまたはConE、C/GまたはConG、と書きます。

 正しくは
   →基本形
 C/E →第一転回型
 C/G →第二転回型
と呼びます。
図8−I Cのコードの転回
図8−I

 G/Fというコードを良く見ますよね?これは、ドミナントセブンスの 和音の「第三転回型」のことです。
 そのF音は、和音のセブンスの音で、ファソシレという和音がなると、一番下にあるファの音はミに降りたくなるようなサウンドを発します。もちろん、導音(リーディングトーン)であるBの音は主音に落ち着きたくなります。

図8−II G7のコードの転回 G7
図8−II
G7/B
G7/D
G/F

6.和音の転回とオン・コード その2

 オンコードの有効な使い方は、ベースラインをメロディックにする、ということです。
 ベースが和音の根音(ルート)だけを 歌っているのでは、格好悪いのです。ベースはもちろん、他のパートを支えるのですが、リードのメロディに対して、より 効果的な動きをするために、今鳴っている和音のルートではない 構成音を使うわけです。
  前回、キラキラ星を4パートのアカペラで作ってみました。 今回までで、皆さんが学んだ内容でもう一歩進んだアレンジを してみます。(楽譜をクリックすると大きくなります)
図9−I 前回のキラキラ星
図9−I
図9−II 一歩進んだキラキラ星
図9−II
 前回のキラキラ星と今回のキラキラ星の違いをよく見てみると、 前回のが、
T(トニック)−S(サブドミナント)−T(トニック)か、あるいはT−D(ドミナント)−T(トニック)
という和音の進行しか無いのに対して、
今回のは、
T−S−D−T
という、もう一歩進んだ和音進行が出てきます。よりカッコイイ色合いが出ていると思います。
 出だしのところのベースラインを、ドドミミとして、I (C)の和音を転回 させたことで、よりスムースにIV の和音につなぐことが出来ます。それに、CとC/Eの響きって、けっこう違いがありますから、1小節間ずっと同じコードでも、退屈しません。

 もう一つ今回のキラキラ星の一歩進んだ点は、セブンスを使ったことです。
 V-I 、ドミナントからトニックに移るときに、V7 にすることで、よりハッキリと安定している音に進むんだ、というサウンドが出来上がっていると思います。それに、3小節目の最後で、IV7(FM7)を使いました。ここでは、ファの音と半音しか違わないミの音が上のほうで鳴るので、ドキッとするかもしれませんが、 とても美しい和音です。
 次回は、オン・コードについてもう一歩進んだ話をしつつ、キラキラ星をもっと格好良く、モダンにしてみましょう。でも、それには、もう少しだけ理論を学ばなければいけないんですが、でも、もう、皆さんは、基礎は大丈夫なはずですから、 実際のアレンジを中心に、もうすこし実践的な(=おいしい)アレンジの仕方について進めますので、お楽しみにして下さい!

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編著者: 柴山拓郎

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著者プロフィール

柴山拓郎 柴山 拓郎(作曲)
 1971年東京生まれ。ポピュラー音楽からテクノロジー音楽まで 幅広いジャンルの音楽を越境する現代音楽作曲家。2000年から『@ELISE』にてJ-POPのピアノ編曲なども数多くこなし、同ページではハモリ講座を執筆、アカペラのアレンジ法に関する音楽理論をわかりやすく解説する。

 97年東京音楽大学大学院修士課程修了。作曲を西村朗、池辺晋一郎、湯浅譲二、遠藤雅夫の各氏に師事。93年第62回日本音楽コンクールに、94年秋吉台国際作曲賞にそれぞれ入選。また、秋吉台作曲セミナーで、C・チェルノウィン、G・シュテープラー、K・シムの各氏に作曲を師事する。96年より 、作曲家団体「深新会」に所属し定期的に新作を発表。98年には、古楽器奏者と作曲家から成るグループ「アルコバレーノ」の結成に参加、以降毎年古楽器奏者と共に演奏会を企画、古楽器のための作品を作曲する。また、同年より、日本を代表する打楽器アンサンブル、パーカッショングループ72のメンバーとして、作編曲や 楽曲解説の執筆の他、J.ケージ、E.ヴァレーズ等の演奏にも携わる。2000年、オルガンのための「Monologue」が、松居直美氏によりオランダ各地で演奏された他、同年秋には、アムステルダム旧教会にて同氏によりCD収録された。邦楽器への取り組みも多く、二十絃箏のための「monody(1999)」をはじめとし、これまでに日本音楽集団、松村エリナ氏、真鍋尚之氏等からの委嘱を受ける。

 2001年5月にリリースされたトランペット奏者 曽我部清典氏のアルバム「トキノコダマ」に独自の視点で編曲したビートルズの「with a little help from my friend」が収録されている他、ピアニスト門光子氏のCD「風の記憶」に、「哀歌(monody)」が、武満徹、藤枝守、三木稔、西村朗、吉松隆ら日本を代表する作曲家の作品と共に収録されている。2002年春 M-A Recordingからリリース、同年レコード芸術準特選版に選定された。同氏の次作アルバム「東方逍遙」では、アジアのポピュラーソングを透明感のあるサウンドで編曲する他、新作が収録され、2003年レコード芸術準推薦版に選定された。

 美術や空間におけるサウンドデザインの活動も活発に行い、2005年 NPO法人 芸術資源開発機構とのコラボレーションで、埼玉県立近代美術館のためのサウンドインスタレーションをコンピュータプログラミングにより制作する。美術作家井上尚子氏とのコラボレーションは10年に及び、ICC、スパイラル、Bankart等における同氏作品への音響デザインを多数提供する。2006年からは同氏とのユニット「Air Plug」として活動を改めて開始し、福島現代美術ビエンナーレに作品を出展。

 2002年から東京電機大学 理工学部 情報システムデザイン学系アミューズメントデザインコース助手として「作曲・音楽文化研究室」を主宰。電子音響音楽等テクノロジーが関わった新しい音楽の表現研究や制作指導を、技術指導にとどまることなく「テクノロジー・アート・情報・社会」等の多眼的視点から捉えた授業やゼミを展開、後進の指導にあたっている。

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